有機米栽培に向けてまずは目指した、国が定めた有機JAS認証の取得。
認証取得には、3年以上化学肥料・農薬を一切使用しない農作が必要とされています。
夫婦力を合わせ、この規定に則った水田の土壌改良を進め、ようやく取得に至りました。
晴れて認証を受けた時には、ようやく本来目指したかった米農家が始まったなと夫婦共々感慨深いものがありました。
そして家内を有機米格付責任者に配し、毎年、認証検査官を迎えての厳しい審査を受け、更新しています。

土壌改良により、田んぼにはすっかり消えてしまっていたさまざまな生き物や多くの虫たちも戻り、私の子供の頃の記憶にある本来の姿を取り戻してきています。
育ち行く稲に舞うたくさんのホタルを見るにつけ、自然の力の偉大さを感じると同時に、農薬の恐ろしさを改めて感じます。
農薬は稲の成長を阻害するものを排除し、生産性を飛躍的に高めることを可能にした反面、それと引き換えに失ってしまったものの大きさや大切さ。
本当に体にいいものは自然の力でしか産み出すことはできない、そんな当たり前のことを強く感じています。

本当に安全でおいしいお米を育てるにはいくつかの要素がありますが、私たちはその中でも特に土にこだわっています。
稲が育つ3大要素として「窒素」「リン酸」「カリ」があります。
本来それらは微生物と一緒に自然界に存在しているものであり、そしてその微生物がさらに土を豊かにして行きます。
化学肥料に即効性はありますが、肝心のその微生物が死んでしまい、土本来が持つ力を奪い去ってしまいます。
そんな土で育てた米がおいしいはずがありません。
有機肥料(天然の物)を使い自然界に存在する微生物で豊かな土を作ること、私たちはそこにこだわっています。

私たちは「有機栽培米」だけではなく、「特別栽培米(農薬の使用を制限した栽倍米)」「慣行米(一般的な手法の栽培米)」も育てています。
本心から言えば全て「有機栽培米」にしたい所ですが、雑草の駆除など他の栽培方法に比べ数十倍の手間がかかり、作付面積を限定しないと対応できないという厳しい現実があります。
やはり自然の米作りは大変です。
それでも、農薬の類の使用は極力避け、さまざまな工夫により、より安全でよりおいしいお米作りを徹底して目指しています。

私たちは常に稲の様子を見ながら大切に育てています。
実り行く稲たちが今どんな状態にあるのかはもちろん、何を求めているのか、そして何を与えてはいけないのか。
私たちは常にそこに気を配ります。
そして稲が育っている頃、夜は山の方から、日中は木場潟の方から、おいしいお米作りには非常にいい少し涼しい風が吹きます。
そんな中で育む稲たちは我が子のようでもあり、時にはいたわり、時には厳しく、限りない愛情を持って育てています。

やがて稲たちが実を付け、喜びひとしおの収穫の時期が訪れます。
しかし、残念ながら全てのお米たちが思い通りに育ってくれているわけではありません。
お米は、収穫後さまざまな工程を経て出荷に至りますが、不出来なお米は省く必要があります。
いくつかの選別工程がある中で、私たちは特に色彩選別を徹底しています。
一つ一つのお米を色彩選別機にかけ、黒い米(カメムシなどに食べられた米)・残っているもみ・発育不十分な青米等をはじき出す工程ですが、その機械の調整が非常に大切で、さまざまな経験的なノウハウが必要になってきます。
私たちは労を惜しまず収穫田ごとにその調整を行い、またその他の工程においても個々に対応することで、行き届いた品質管理を徹底しています。